CASE

事例紹介

全国展開企業の助成金ポートフォリオ設計

顧客像
中古車流通の大手企業(全国展開)
担当
株式会社ワトナル
テーマ
制度調査・計画

課題

全拠点が雇用保険の1適用事業所で一括されており、拠点の実態に合った単位かどうかの見直しが課題だった。あわせて、一部拠点の雇止めが全社の助成金の判定に及ぶ点も整理が必要だった。

支援の内容

人事異動の多さなど拠点の実態を踏まえ、適用事業所の単位を本社・主要拠点・地方6ブロックの8単位に見直す案を設計。人材開発支援・キャリアアップ・特定求職者雇用開発の各助成金で、最大受給額と最低ラインを試算した。

成果・ポイント

最も実現性が高い打ち手として「有期実習型訓練から正社員化」の組合せを特定。

背景にある制度・ルール

雇用保険の「適用事業所」という単位

雇用保険は、労働者が雇用される事業に適用されます(雇用保険法第5条)。労働保険の適用単位は、企業全体ではなく、本社・支店・工場のように経営組織として独立性をもった個々の経営体が基本とされています。一方で、人事や経理などの独立性がない支店などは、本社などでまとめて手続きを行う扱いもあります。どのような単位で適用事業所を設けているかは、日々の手続きだけでなく、助成金の要件を判断する場面にも関わってきます。

助成金の要件と離職の関係

雇用関係の助成金には、一定の期間内に事業主の都合による離職(解雇等)があると支給されない、という要件を設けているものがあります。特定求職者雇用開発助成金でも、離職の割合に関する書類が申請時の添付書類として示されています。本事例のように全拠点が1つの適用事業所にまとまっていると、一部の拠点で生じた雇止めなどが、ほかの拠点での取組みも含めた全社の助成金受給に響くおそれがあります。判定の期間や考え方は助成金ごとに異なるため、支給要領での確認が欠かせません。

検討した3つの助成金

  • 人材開発支援助成金:従業員に訓練を行う事業主に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。人材育成支援コースでは、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練も対象になります。
  • キャリアアップ助成金:有期雇用労働者等の正社員化などに取り組む事業主を支援する制度です。各コースの実施日の前日までに、キャリアアップ計画などを作成・提出する必要があります。
  • 特定求職者雇用開発助成金:高年齢者や障害者など就職が特に困難な方を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に助成する制度です。

支援のポイント

人事異動の多さを前提に8単位の案を設計

適用事業所を、本社・主要拠点・地方6ブロックの8単位に分ける案を設計しました。拠点ごとに細かく分ければ影響の範囲は小さくなりますが、人事異動が多い企業では、そのたびに発生する手続きや管理の負担が増えます。異動の多さを前提に、影響の範囲を区切りながら無理なく管理できる単位として、ブロック単位の案を組み立てました。

最大受給額と最低ラインを試算

人材開発支援・キャリアアップ・特定求職者雇用開発の各助成金について、最大受給額と最低ラインの両方を試算しました。上限だけを見て計画すると、要件の一部を満たせなかった場合の見込みが立ちません。最低ラインもあわせて示すことで、経営判断に使える幅をもった見通しになります。

実現性で打ち手を選ぶ

試算の結果、最も実現性が高い打ち手として「有期実習型訓練から正社員化」の組合せを特定しました。金額の大きさだけでなく、現場で無理なく実行できるか、要件を継続して満たせるかという観点で比べたことがポイントです。キャリアアップ助成金の令和8年度の案内でも、人材開発支援助成金の訓練との連携について示されており、訓練と正社員化を一連の流れとして設計する考え方と整合します。

同じような課題をお持ちの方へ

  • 適用事業所の構成を確認する:自社の雇用保険の適用事業所がいくつあり、各拠点がどこに属しているかを一覧にします。
  • 離職の状況を把握する:拠点ごとの離職、特に事業主都合とされうる離職や雇止めの予定を把握します。
  • 単位の見直しは実態にもとづいて:適用の単位は人事・経理の独立性など実態に応じて判断されます。管轄のハローワークに確認しながら検討します。
  • 助成金は組み合わせで考える:採用、訓練、正社員化を一連の流れで設計すると、取組みの一貫性が高まります。
  • 最新の支給要領で確認する:要件や金額は年度ごとに見直されます。
  • 申請手続きは資格者と:申請書類の作成や提出の代行は、社会保険労務士の業務です。

参考資料

※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。