CASE

事例紹介

合同会社の本店所在地の更正登記(錯誤)

顧客像
合同会社
担当
ワトナル司法書士事務所
テーマ
商業登記

課題

設立時の転記ミスで本店所在地が誤って登記されていた。定款や決定書など当初の内部書類にも同じ誤記があり、「当初の書面で錯誤を証明する」通常の方法が使えなかった。

支援の内容

「更正」と「変更」「移転」を切り分け、住居表示と地番の論点を先例で確認して登録免許税(2万円・課税)を確定。正しい住所が記載された建物賃貸借契約書を客観証拠の柱とし、公的な証明書と上申書で錯誤の証明を組み立てた。定款の記載方法(最小行政区画のみか、番地までか)による手続の分岐も整理。

成果・ポイント

登記申請書・委任状・上申書の一式を整備。

背景にある制度・ルール

「更正」「変更」「移転」の違い

会社の登記を直す手続きには、いくつかの種類があります。

  • 変更の登記:登記された事項が、その後の事情で変わったときに行う登記です。
  • 移転の登記:本店を別の場所に移したときに行う登記です。
  • 更正の登記:登記をした時点から内容に誤り(錯誤)や漏れ(遺漏)があったときに、それを正す登記です。

商業登記法第132条は、登記に錯誤または遺漏があるときは、当事者がその登記の更正を申請できると定めています。更正の申請書には、錯誤または遺漏があることを証する書面を添付しなければなりません(同条第2項。氏・名・住所の更正については例外があります)。本店を実際には動かしていないのに「移転」として申請したり、当初からの誤りを「変更」として扱ったりすると、登記の内容が事実と合わなくなります。どの手続きにあたるかを最初に見極めることが重要です。

登録免許税の違い

登録免許税は登記の種類によって異なります。会社の登記では、本店の移転の登記は本店1か所につき3万円、登記の更正の登記は申請1件につき2万円とされています(登録免許税法別表第一第24号(一)ヲ・ネ)。一方で、住居表示の実施や変更に伴う登記事項の変更の登記は非課税とされています(同法第5条第4号)。誤りの原因や手続きの種類によって税額の扱いが変わるため、根拠を確かめて確定する必要があります。

定款の「所在地」と登記の「所在場所」

合同会社の定款には「本店の所在地」を記載し(会社法第576条第1項第3号)、設立の登記では「本店及び支店の所在場所」を登記します(同法第914条第3号)。定款で最小行政区画までしか定めていない場合と、番地まで定めている場合とでは、本店の所在場所の誤りを正すときに定款をどう扱うかが変わり、手続きの組み立ても変わります。

支援のポイント

手続きを切り分ける

まず、設立時の転記ミスという誤りの性質から、「更正」と「変更」「移転」を切り分けました。手続きの選択を誤ると、登記の内容も税額も事実と合わなくなるためです。

住居表示と地番の論点を先例で確認

本店の表示には、住居表示と地番という異なる表し方があります。この論点を先例で確認したうえで、登録免許税を2万円(課税)と確定しました。非課税になりうるかどうかをあいまいにしたまま申請すると、補正などで手続きが長引くおそれがあるため、事前に根拠を確かめておくことが大切です。

客観的な証拠を柱に錯誤を証明

本件で難しかったのは、定款や決定書など当初の内部書類にも同じ誤記があり、「当初の書面で錯誤を証明する」通常の方法が使えなかった点です。そこで、正しい住所が記載された建物賃貸借契約書を客観的な証拠の柱とし、公的な証明書と上申書を組み合わせて錯誤の証明を組み立てました。社内で作成した書類ではなく、第三者との間で作成された契約書を中心に据えることで、誤りが転記の段階で生じたものであることを客観的に示す狙いです。

定款の記載方法による分岐を整理

定款の記載が最小行政区画のみか、番地までかによる手続の分岐も整理しました。そのうえで、登記申請書・委任状・上申書の一式を整えました。

同じような課題をお持ちの方へ

  • 登記事項証明書を確認する:設立直後や本店の移転の後は、登記の内容が実際と一致しているかを確認します。
  • 誤りの原因を整理する:当初からの誤りか、その後の変更か、住居表示の実施によるものかで、手続きと税額が変わります。
  • 証拠になる書類を集める:賃貸借契約書など、第三者との間で作成された書類は有力な手がかりになります。
  • 定款の記載を確認する:本店の記載が最小行政区画までか、番地までかを確認します。
  • 関連する届出との整合を確認する:登記を正した後は、取引先や金融機関、行政機関への届出内容とも食い違いがないか確認しましょう。

ワトナル司法書士事務所では、会社の登記に関するご相談をお受けしています。

参考資料

※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。