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助成金を活用する前に知っておきたい3つのこと

雇用関係の助成金は、非正規雇用の方の正社員化や人材育成、賃上げと設備投資などに取り組む企業を後押しする制度です。一方で、決められた要件と手順を守らなければ受給できません。取組みを終えてから申請しようとしても、対象にならない助成金もあります。ここでは、活用を検討する前に知っておきたい3つのポイントを整理します。

1. 計画の提出や交付決定は「取組みの前」が基本

多くの助成金では、取組みを始める前に計画を提出したり、交付決定を受けたりする必要があります。たとえば次のような例があります。

  • キャリアアップ助成金:各コースの実施日の前日までに、労働組合等の意見を聴いて作成した「キャリアアップ計画」などを作成し、提出する必要があります。
  • 業務改善助成金:設備投資などを行う前に事業実施計画を策定し、交付決定を受ける必要があります。交付決定前に購入・導入したものは助成の対象外です。
  • 人材開発支援助成金:「職業訓練実施計画届」の提出が手続きの出発点となり、どの支給要領が適用されるかも計画届の提出日で決まります。

このため、「助成金が使えるかもしれない」と思ったら、契約・発注・実施の前に確認することが何より大切です。検討の段階でご相談いただければ、スケジュールを逆算して準備できます。

2. 労務管理の書類と法令順守が前提

雇用関係の助成金は、雇用保険の適用事業所の事業主であることが前提で、労働保険料の未納や労働関係法令の違反があると支給されない場合があります。審査では、出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、労働者名簿、雇用契約書(労働条件通知書)などの提出を求められることが多く、内容に不備や矛盾があると支給されないことがあります。

労働者名簿や賃金台帳は、もともと労働基準法で作成・保存が義務付けられている書類です(第107条〜第109条)。また、労働契約を結ぶときには、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければなりません(第15条)。日ごろからこれらが正しく整っていることが、助成金活用の土台になります。特に次の点を確認しましょう。

  • 労働時間を記録し、残業代を正しく計算・支払っているか
  • 賃金台帳の記載と、実際の支払額が一致しているか
  • 就業規則や賃金規程の内容と、実際の運用が一致しているか
  • 労働保険料を期限どおりに納めているか

また、一定の期間内に事業主の都合で従業員を離職させていると受給できない助成金もあります。人員整理などを予定している場合は、必ず事前に確認しましょう。あわせて、離職理由を事実どおりに記録しておくことも大切です。実際には事業主の都合による離職なのに自己都合として扱うなど、事実と異なる届出は不正受給につながるおそれがあります。

3. 制度は年度ごとに見直される

助成金の内容は、年度の途中も含めて見直されます。たとえば2026年度(令和8年度)は、キャリアアップ助成金に「短時間労働者労働時間延長支援コース」が新設されました。人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースでは、8月3日以降に提出する計画から「対象とならない訓練」や「受講回数の上限」が変更されています。業務改善助成金でも、対象となる労働者が雇用保険の被保険者に限られるなどの見直しが行われました。

以前に使ったことがある助成金でも、要件や様式、金額が変わっている可能性があります。必ず最新の支給要領やパンフレットで確認しましょう。また、どの時点の要領や様式が適用されるかは、計画届の提出日や取組みの実施日によって決まるものがあり、様式の取り違えにも注意が必要です。

申請前の確認ステップ

  1. 目的を決める:正社員化、人材育成、賃上げと設備投資など、会社として取り組みたいことを整理します。
  2. 候補の助成金を選ぶ:目的に合う助成金と、その年度の要件を確認します。
  3. スケジュールを逆算する:計画の提出期限、取組みの期間、支給申請の期限を一覧にします。
  4. 労務管理の状況を点検する:上で挙げた書類や規程を確認し、必要なら先に整えます。
  5. 計画を提出し、取組みを実施する:計画どおりに実施し、証拠となる書類を保管します。
  6. 期限内に支給申請する:申請期限を過ぎると受給できません。雇用関係助成金ポータルを使った電子申請ができる助成金もあります。

注意したいこと

  • 不正受給は厳しく扱われる:偽りの申請などで不正に受給した場合は返還を求められ、事業主名が公表されることもあります。申請は事業主自身の責任で行うものです。専門家に依頼する場合も任せきりにせず、内容の説明を受けて確認しましょう。
  • 勧誘に注意する:厚生労働省の委託先を名乗り、助成金の申請や無料の受給診断を持ちかける勧誘が報告されています。厚生労働省は、このような勧誘に関与していないとして注意を呼びかけています。
  • 受給を前提にしすぎない:助成金は審査を経て支給が決まり、予算の範囲内で募集を早めに終える制度もあります。受給を前提にした資金計画は避けましょう。

当事務所では、自社に合う助成金の確認から、計画書・申請書の作成、提出の代行までお手伝いしています。取組みを始める前の段階で、お気軽にご相談ください。

参考資料