CASE

事例紹介

障害福祉事業者のキャリアパス規程(処遇改善加算への対応)

顧客像
障害福祉サービス事業者(埼玉県)
担当
ワトナル社会保険労務士事務所
テーマ
規程整備

課題

福祉・介護職員等処遇改善加算のキャリアパス要件を満たす規程が必要。人事評価制度はない。

支援の内容

要件Ⅰ〜Ⅳに沿って、法人独自の5段階の職位、研修計画、経験年数と資格取得の2軸による昇給、高位処遇(年収460万円以上)の定めを整備。既存職員の不利益変更を避ける経過措置も明記した。

成果・ポイント

令和8年6月の報酬改定(基準額の引上げ)を反映した規程を整備。

背景にある制度・ルール

障害福祉サービス等の「福祉・介護職員等処遇改善加算」は、職員の賃金改善などに取り組む事業者に対して報酬を加算する仕組みです。加算区分(Ⅰ〜Ⅳ)に応じて、キャリアパス要件や職場環境等要件を満たす必要があります。厚生労働省・こども家庭庁の資料では、加算区分ごとの算定要件が次のように整理されています。

  • キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ:賃金体系等の整備及び研修の実施等(職位や職責に応じた任用の要件と賃金体系を定めること、資質向上のための研修を計画的に実施することなど)。加算Ⅰ〜Ⅳに共通です。
  • キャリアパス要件Ⅲ:昇給の仕組みの整備(加算Ⅰ〜Ⅲ)
  • キャリアパス要件Ⅳ:経験・技能のある職員のうち1人以上について、改善後の賃金を一定額以上とすること(加算Ⅰ・Ⅱ)
  • キャリアパス要件Ⅴ:経験・技能のある職員に関する要件(加算Ⅰ)

令和8年6月施行の見直しでは、処遇改善加算の対象が福祉・介護職員から障害福祉従事者に広げられました。あわせて加算Ⅰ・Ⅱについては、キャリアパス要件Ⅳの水準(経験・技能のある職員のうち1人以上の改善後賃金が年額440万円以上)を、直近の全産業平均水準を踏まえて年額460万円以上とする基準を満たすか、職場環境等要件の取組を増やすか、のいずれかを満たすこととされています。これらの見直しは、要件の整備に一定の期間を要することから、令和8年度中の対応の誓約で可とし、実績報告書で確認する扱いとされています。

規程を整備する際は、労働契約法にも注意が必要です。同法第9条は、労働者と合意することなく、就業規則の変更により労働者の不利益に労働条件を変更することはできないと定めています。第10条は、変更後の就業規則を周知し、かつ、変更が労働者の受ける不利益の程度や変更の必要性などに照らして合理的なものであるときに限り、変更後の就業規則によるとしています。新しい職位や賃金体系を導入する際は、既存職員の処遇が下がる結果にならないかの確認が欠かせません。

支援のポイント

本件は、キャリアパス要件を満たす規程が必要な一方で、人事評価制度はないという状況でした。そこで、要件Ⅰ〜Ⅳに沿って、次の内容を整備しました。

  • 法人独自の5段階の職位:要件Ⅰの土台です。職位ごとの役割と任用の要件が明確になっていることが、賃金体系を説明する前提になります。
  • 研修計画:要件Ⅱに対応するものです。職位で求める役割と研修の内容が対応していると、計画の目的が職員にも伝わりやすくなります。
  • 経験年数と資格取得の2軸による昇給:要件Ⅲに対応するものです。人事評価制度がない状態でも、客観的に判定できる基準で昇給の仕組みを設けるための設計で、評価制度を一から導入するよりも運用の負担が少なく、職員にとっても分かりやすい基準になります。
  • 高位処遇(年収460万円以上)の定め:要件Ⅳに対応するものです。令和8年6月の報酬改定で示された基準額の引上げを反映しました。

あわせて、既存職員の不利益変更を避ける経過措置も明記しました。新しい職位や賃金表に当てはめた結果、従来より賃金が下がる職員が出ると、労働契約法上の不利益変更の問題が生じます。移行時の取扱いをあらかじめ規程に書いておくことで、制度の導入そのものが争いの原因にならないよう配慮しています。

同じような課題をお持ちの方へ

  • 現在取得している加算区分と、目指す加算区分に必要な要件を一覧にしましょう。
  • 人事評価制度がなくても、経験年数や資格など客観的な基準で昇給の仕組みを設計することができます。
  • 職位・研修・昇給の定めは、規程に書くだけでなく、職員に周知し、実際に運用できる内容にしましょう。
  • 新しい賃金体系への移行で賃金が下がる職員がいないか、一人ずつ当てはめて確認し、下がる場合は経過措置を検討しましょう。
  • 就業規則(賃金規程などを含む)を変更した場合は、常時10人以上の事業場では、労働者の過半数代表等の意見を聴いて労働基準監督署に届け出ましょう。
  • 報酬改定のたびに要件や基準額が見直されることがあります。厚生労働省や指定権者(都道府県等)の最新の通知を確認しましょう。

参考資料

※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。