CASE

事例紹介

小売チェーン3店舗の業務改善助成金 交付申請

顧客像
小売業(鹿児島県・多店舗展開)
担当
ワトナル社会保険労務士事務所
テーマ
助成金・奨励金

課題

最低賃金の改定に合わせた賃上げと、店舗の設備投資を同時に進めたい。

支援の内容

店舗ごとに事業場を分け、3店舗分の交付申請書類を作成。最低賃金の改定日に合わせて賃上げ日を設定し、見積先と相見積先に利害関係がないことも確認した。

成果・ポイント

3事業場分の申請書類一式を同時に整備。

背景にある制度・ルール

業務改善助成金は、事業場内で最も低い時間給(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行った中小企業・小規模事業者に、その費用の一部を助成する国の制度です。令和8年度は「50円」「70円」「90円」の3コースに再編され、引き上げる労働者数と事業場規模に応じて助成上限額が決まります。助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。

ポイントの一つは、申請が「事業場単位」であることです。厚生労働省のリーフレットでは、工場や事務所など労働者がいる事業所ごとに申請するとされ、Q&Aでは、事業場の独立性の判断は労働基準法の考え方と同じだと説明されています。同一事業所の申請は年度内1回までです。

令和8年度は、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満である事業場が対象です。申請期間は令和8年9月1日から、その都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日または同年11月30日のいずれか早い日までです。賃金の引上げは申請より後に行い、地域別最低賃金の発効に対応して引き上げる場合は、発効日の前日までに完了させる必要があります。発効日当日の引上げは対象外となり、引上げ後の事業場内最低賃金額は就業規則等にも定めなければなりません。

また、導入機器等の納品や契約は交付決定後でなければならず、交付決定前に契約・納品したものは助成対象になりません。契約予定額が10万円(税抜)未満の場合を除き、原則として同一条件の仕様による二者以上の見積りが必要で、自社やグループ企業、役員を兼任している会社、代表者の親族などが作成した見積書は認められないとされています。

支援のポイント

本件では、店舗ごとに事業場を分け、3店舗分の交付申請書類を作成しました。事業場単位の制度であるため、どの店舗を一つの事業場として扱うかによって、事業場内最低賃金の判定の対象となる労働者や、引き上げる労働者数、ひいては助成上限額が変わります。最初に店舗と事業場の対応関係をはっきりさせたことが、3件の申請を矛盾なく組み立てる前提になりました。

次に、最低賃金の改定日に合わせて賃上げ日を設定しました。令和8年度の業務改善助成金では、申請日より前の引上げも、発効日当日以降の引上げも対象外になります。最低賃金の改定に合わせて賃上げを予定している場合、「申請後から発効日の前日まで」という限られた期間の中に、賃上げ日と就業規則等の改正日を収めることが、助成の対象になるかどうかを分ける重要な点です。

さらに、見積先と相見積先に利害関係がないことも確認しました。相見積もりは価格の妥当性を確かめるためのもので、関係の深い会社同士の見積りでは比較の意味がなくなるため、認められない見積書の範囲がQ&Aで具体的に示されています。提出後に指摘を受けて差し替えるより、作成の段階で確認しておく方が、スケジュールの面でも確実です。

こうした確認を3店舗それぞれについて行い、3事業場分の申請書類一式を同時に整備しました。

同じような課題をお持ちの方へ

  • 自社の地域の最低賃金の発効日を確認し、申請日・賃上げ日・就業規則等の改正日を一つの表にして逆算しましょう。
  • 店舗や工場が複数ある場合は、どこを一つの事業場として申請するかを最初に整理しましょう。
  • 事業場内最低賃金は、雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者のうち最も低い時間給で判断し、引き上げる労働者も雇用保険被保険者が対象です。
  • 設備の発注・契約は交付決定を待つ必要があります。業者との日程調整は交付決定後を前提に組みましょう。
  • 見積りは同じ仕様で二者以上から取り、見積先同士や自社との関係に問題がないかを確認しましょう。
  • 予算の範囲内で交付されるため、申請期間内でも募集が終了する場合があります。早めに準備を始めましょう。

参考資料

※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。