CASE

事例紹介

キャリアアップ助成金に向けた就業規則のギャップ分析

顧客像
新たに4名を採用した企業
担当
ワトナル社会保険労務士事務所
テーマ
規程整備

課題

正社員化コースの活用を見込むが、就業規則は案の段階、雇用契約書はひな形のままだった。

支援の内容

要件と照合し、不支給につながる3点(正社員の賞与・退職金の定めがない、有期社員用の規則がない、転換の手続が定められていない)を特定。割増賃金の算定基礎など法令面のリスクも指摘し、転換日から逆算した整備スケジュールを作成した。

成果・ポイント

入社前後に整えるべき事項と期限を明確化。

背景にある制度・ルール

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換した事業主に助成する国の制度です。厚生労働省の令和8年4月8日版リーフレットでは、受給の条件として次の3点が示されています。

  • 正規雇用労働者に転換する前日までに「キャリアアップ計画」を作成・提出していること
  • 正規雇用労働者に転換する制度を就業規則などに規定していること
  • 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させていること

あわせて、この助成金でいう「正規雇用労働者」は、同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用されている労働者で、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が転換時点で適用されている者に限るとされています。支給対象期間中に予定されている賞与や昇給が適用されていない場合は、要件を満たさず支給対象とならない場合がある、とも注意書きされています。助成額は、中小企業が有期雇用労働者を転換した場合で1人40万円(重点支援対象者は2期に分けて80万円)などで、支給申請は、転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内に行います。

就業規則には、助成金とは別に労働基準法上のルールもあります。たとえば、割増賃金の算定基礎から除外できる賃金は、家族手当・通勤手当のほか、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金に限られています(労働基準法第37条第5項、同法施行規則第21条)。これ以外の手当を除外して計算していると、割増賃金の不足につながります。

支援のポイント

本件は、新たに4名を採用した企業が、正社員化コースの活用を見込んでいたケースです。就業規則は案の段階、雇用契約書はひな形のままでした。そこで要件と照合し、不支給につながる3点を特定しました。

  • 正社員の賞与・退職金の定めがない:助成金上の正規雇用労働者は、「賞与または退職金の制度」と「昇給」が適用されていることが前提です。定めがなければ、転換しても要件を満たしません。
  • 有期社員用の規則がない:転換前と転換後で適用される規則が区別されていないと、どの雇用区分からどの雇用区分へ転換したのかを示すことができません。
  • 転換の手続が定められていない:助成の対象は、就業規則などに規定した制度に基づく転換です。どのような要件・手続で転換するのかが規定されていなければ、制度に基づく転換であることを示せません。

あわせて、割増賃金の算定基礎など法令面のリスクも指摘しました。助成金の要件を満たしても、規則そのものに法令上の問題があれば、後に未払い賃金などの問題が生じかねないためです。

そのうえで、転換日から逆算した整備スケジュールを作成しました。キャリアアップ計画の提出、就業規則の整備と施行、転換、転換後6か月分の賃金支払、支給申請と、それぞれに順序と期限があります。就業規則の施行前に転換してしまうと、制度に基づく転換と認められないおそれもあるため、入社前後に整えるべき事項と期限を明確にしました。

同じような課題をお持ちの方へ

  • 正社員と有期社員(パートを含む)で、適用する就業規則や賃金規程を分けて整備しましょう。
  • 正社員に賞与または退職金、昇給の定めがあるか、実際に適用される予定かを確認しましょう。
  • 転換制度は、対象者の要件・手続・時期を就業規則に具体的に書き、施行してから運用しましょう。
  • キャリアアップ計画は転換の前日までに提出が必要です。転換予定日から逆算して準備しましょう。
  • 雇用契約書はひな形のまま使わず、就業規則と内容が一致しているか確認しましょう。
  • 割増賃金の計算で除外している手当が、法令で認められたものかどうかも点検しましょう。

参考資料

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