業務改善助成金が使えない事業者の「計画年休+賃上げ」設計(3社)
- 顧客像
- 神奈川県ほかの中小企業(10〜30人未満など)
- 担当
- ワトナル社会保険労務士事務所
- テーマ
- 助成金・奨励金
課題
要件の関係で業務改善助成金は使えないが、賃上げの原資は確保したい。
支援の内容
働き方改革推進支援助成金で、計画年休の新規導入と賃上げ加算を組み合わせて設計。賃金の締切日と昇給日の関係から賃上げ日を決め、目標は最低ラインではなく5%の賃上げに置いた(1社)。労働局からの照会(労働条件通知書、パートタイム労働者の定め、年休の付与状況)にも対応。
成果・ポイント
単独申請でも費用対効果が成り立つ型として標準化。
背景にある制度・ルール
令和8年度の業務改善助成金は、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であることが要件です。すでに地域別最低賃金を上回る賃金を支払っている事業者は、この制度を使えません。
そのような場合の選択肢の一つが、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)です。成果目標の一つに「年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入」があり、その上限額は25万円です。これに賃上げ加算を組み合わせると、労働者の時間当たり賃金の引上げ率(3%以上・5%以上・7%以上)と引上げ人数に応じて上限額が加算されます。常時使用する労働者が10人以上30人以下の場合は5%・7%の区分の加算額が2倍、10人未満の場合は2.5倍となります。助成率は原則3/4で、常時使用する労働者が30人以下で、一定の設備・機器等を導入し、その所要額が30万円を超える場合は4/5です。
計画的付与は労働基準法第39条第6項に基づく制度で、労使協定により、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を定めて与えるものです。支給要領では、就業規則等に計画的付与を定めること(常時10人以上の事業場では、交付申請後から事業実施予定期間の終期までに届出・施行すること)と、対象者、対象となる日数、具体的な付与の方法、付与日数が少ない者の扱い、計画的付与日の変更に関する事項を労使協定で定めることが求められています。
賃上げ加算には時期の決まりもあります。支給要領では、引上げの時点は引き上げられた賃金の「計算期間の始期」とされ、その始期と就業規則等の作成・変更の両方が、交付申請日から事業実施予定期間の終期までの間に含まれている必要があります。また、対象事業主の要件として、すべての事業場で年休管理簿を作成していること、常時10人以上の事業場では年休の時季指定に関する定めのある就業規則を交付申請前に届け出ていることが求められ、パートタイマー用など別個の就業規則がある場合は、そちらにも定めておく必要があります。
支援のポイント
本件では、要件の関係で業務改善助成金が使えない3社について、働き方改革推進支援助成金で計画年休の新規導入と賃上げ加算を組み合わせて設計しました。休暇制度の整備と賃上げを同時に進めることで、賃上げの原資の一部を確保する考え方です。
賃上げ日は、賃金の締切日と昇給日の関係から決めました。賃上げ加算では、昇給を決めた日ではなく、引き上げた賃金の計算期間が始まる日が「引上げの時点」になります。締切日の位置によっては、計算期間の始期が交付申請日より前になってしまうおそれがあるため、締切日を起点に逆算して設定しています。
また、1社では、目標を最低ラインではなく5%の賃上げに置きました。加算額は引上げ率の区分によって段階的に変わり、30人以下の事業者では5%以上の区分から加算額が上乗せされます。最低ラインとの差を比較したうえで、目標を判断していただきました。
審査の過程では、労働局から労働条件通知書、パートタイム労働者の定め、年休の付与状況について照会があり、これにも対応しました。いずれも対象事業主の要件や成果目標の前提に関わる書類で、日頃の整備状況がそのまま問われる部分です。
こうした進め方を整理し、単独申請でも費用対効果が成り立つ型として標準化しました。
同じような課題をお持ちの方へ
- 業務改善助成金の対象になるかは、まず事業場内最低賃金と地域別最低賃金を比べて確認しましょう。
- 計画年休を導入する場合は、年休の付与日数が少ない人の扱いや、計画的付与日の変更方法まで労使協定で定めましょう。
- 年休管理簿の作成と、年5日の時季指定に関する就業規則の定め(パート用の規則を含む)は、申請前に整えておきましょう。
- 賃上げ日は、賃金の締切日・支払日・就業規則の改定日を並べて決めましょう。
- 労働条件通知書や雇用契約書が、実際の労働条件や就業規則と一致しているか見直しておきましょう。照会があった際の対応が早くなります。
参考資料
- 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 令和8年度「働き方改革推進支援助成金」労働時間短縮・年休促進支援コースのご案内(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 働き方改革推進支援助成金支給要領(労働時間短縮・年休促進支援コース)(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 労働基準法(第39条)(e-Gov法令検索・2026年10月28日確認)
- 令和8年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ(厚生労働省・2026年10月28日確認)
※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。
