3つの助成金を組み合わせた設備投資・人材育成
- 顧客像
- 長野県の中小企業(約50名・単一事業場)
- 担当
- ワトナル社会保険労務士事務所
- テーマ
- 助成金・奨励金
課題
パート・技能実習生など10名の賃上げと、設備投資、社員の資格取得を並行して進めたい。
支援の内容
業務改善助成金(システム投資)、働き方改革推進支援助成金(計画年休+省力化の機械)、人材開発支援助成金(フォークリフト・玉掛け等の技能講習)を組み合わせた。建設業許可はあるが業種は建設業でないため、一般のコースで申請すると判断。
成果・ポイント
技能講習は訓練計画届を提出済み。必要な投資額を賃上げ額から逆算して提示。
背景にある制度・ルール
本件で組み合わせた3つの助成金は、それぞれ次のような制度です。
- 業務改善助成金:事業場内最低賃金を50円・70円・90円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成します。引き上げる労働者は雇用保険被保険者が対象です。
- 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース):年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入などの成果目標と、労働能率の増進に資する設備・機器の導入などの改善事業を組み合わせて助成します。賃上げ加算もあります。
- 人材開発支援助成金(人材育成支援コース):雇用保険被保険者に職務に関連した訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。人材育成訓練は10時間以上のOFF-JTが対象で、職業訓練実施計画届を訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に管轄労働局へ提出する必要があります。
注意したいのは制度同士の関係です。働き方改革推進支援助成金の支給要領では、同一の機器・設備について業務改善助成金と両方の助成を受けようとする場合、いずれか一つについてのみ交付決定を受けられるとされています。一方、賃上げの対象労働者が両制度で重なることは差し支えないとされています。設備投資は、制度ごとに対象を分けて計画する必要があります。
また、助成金には業種を限定した専用のコースがあります。人材開発支援助成金には、建設事業主向けの「建設労働者認定訓練コース」「建設労働者技能実習コース」が設けられています。労働局の案内では、フォークリフト技能講習は建設労働者技能実習コースの対象ではなく、訓練時間数などの要件を満たせば人材育成支援コースとして申請できる場合があるとされています。業種の判断は、許可の有無ではなく実際に営む主たる事業を基準にするのが基本で、たとえば働き方改革推進支援助成金の支給要領でも、中小企業の判定に用いる「主たる事業」は日本標準産業分類によるとされています。
支援のポイント
本件は、パート・技能実習生など10名の賃上げと、設備投資、社員の資格取得を並行して進めたいというご相談でした。目的が複数あるため、一つの制度に寄せるのではなく、業務改善助成金(システム投資)、働き方改革推進支援助成金(計画年休+省力化の機械)、人材開発支援助成金(フォークリフト・玉掛け等の技能講習)を組み合わせました。投資の対象を制度ごとに分けたのは、同一の設備で複数の助成を受けることができないためです。
また、この会社は建設業許可を持っていますが、業種は建設業ではないため、一般のコースで申請すると判断しました。建設業向けのコースを前提に準備を進めてしまうと、対象外と判断された時点で計画を組み直すことになります。許可の有無ではなく事業の実態から判断したことが、手戻りを防ぐ要点でした。
技能講習については、訓練計画届を提出済みです。人材開発支援助成金は、訓練開始日を基準に計画届の提出期間が決まっているため、講習の日程が決まり次第、逆算して手続を進める必要があります。
さらに、必要な投資額を賃上げ額から逆算して提示しました。助成額は「対象経費×助成率」と「上限額」の低い方になり、上限額は賃上げの内容(引上げ額や人数)で決まります。どの程度の投資であれば上限額を有効に使えるかを示すことで、投資の規模を経営判断として決めていただけるようにしています。
同じような課題をお持ちの方へ
- 目的(賃上げ、設備投資、人材育成)ごとに使える制度を書き出し、どの経費をどの制度で申請するかを一覧にしましょう。
- 同じ設備を複数の助成金で申請することはできません。設備ごとに申請先を一つに決めましょう。
- 技能講習などの訓練は、開始日の6か月前から1か月前までに計画届を提出する必要があります。年間の受講予定を早めに固めましょう。
- 業種によって使えるコースが変わる場合があります。許可や登記の目的だけで判断せず、実際の主たる事業を確認しましょう。
- パートタイマーや技能実習生を賃上げの対象にする場合は、雇用保険の加入状況など、制度ごとの対象者要件を一人ずつ確認しましょう。
- 複数の制度を併用すると、申請・報告の時期が重なります。年間スケジュール表で管理しましょう。
参考資料
- 令和8年度業務改善助成金のご案内(リーフレット)(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 働き方改革推進支援助成金支給要領(労働時間短縮・年休促進支援コース)(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 人材開発支援助成金(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 人材開発支援助成金「人材育成支援コース」のご案内(リーフレット)(厚生労働省・2026年10月28日確認)
- 人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)(宮崎労働局・2026年10月28日確認)
※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。
