CASE

事例紹介

経費の切り分けで2つの助成金を同時申請

顧客像
建設関連の小規模事業者(10人未満)
担当
ワトナル社会保険労務士事務所
テーマ
助成金・奨励金

課題

賃上げの対象は2名のみ。その中で設備投資への助成を最大にしたい。

支援の内容

業務改善助成金(90円コース)と働き方改革推進支援助成金を同時に設計。対象経費を「積算ソフト」と「給与システムの設定代行+機械設備」に切り分け、重複計上を避けた。事務職員も対象に含めて人数区分を一段上げ、月給者は時給換算で90円を超えるよう月給額で調整した。

成果・ポイント

同じ2名の賃上げで、2制度の要件を同時に満たす設計。

背景にある制度・ルール

業務改善助成金と働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は、どちらも設備投資等の費用の一部を助成する国の制度ですが、目的と要件が異なります。

業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引上げが条件で、令和8年度は50円・70円・90円の3コースです。助成上限額は、引き上げる労働者数の区分に応じて段階的に設定されており、たとえば90円コースでは、事業場規模30人未満の事業者で1人100万円、2〜3人240万円、4〜5人270万円です。引き上げる労働者は雇用保険被保険者が対象で、事業場内最低賃金の労働者のほか、その引上げで賃金額が追い抜かれる労働者も、申請コースと同額以上引き上げれば人数に算入できます。月給制の場合は時間額に換算して判断し、1円未満の端数が出る場合も、その金額を基準に申請コースの額以上引き上げれば引上げと認められるとされています。

働き方改革推進支援助成金は、計画年休の新規導入などの成果目標と、労務管理用ソフトウェアや労働能率の増進に資する設備・機器の導入などの改善事業を組み合わせる制度です。

2つの制度を同時に使う場合に重要なのが「経費の重複」です。働き方改革推進支援助成金の支給要領では、賃上げの対象労働者が業務改善助成金の対象者と重なることは差し支えないとする一方、同一の機器・設備について両方の助成を受けようとする場合は、いずれか一つについてのみ交付決定を受けられるとされています。業務改善助成金のQ&Aも、助成対象が同一の設備投資等の費用でないものについては、他の助成金等と併せて受けられるとしています。また、どちらの制度も、交付決定前に契約した経費は対象になりません。

支援のポイント

本件は、賃上げの対象が2名のみという建設関連の小規模事業者のケースです。限られた人数の中で設備投資への助成を最大にするため、業務改善助成金(90円コース)と働き方改革推進支援助成金を同時に設計しました。

まず、対象経費を「積算ソフト」と「給与システムの設定代行+機械設備」に切り分け、重複計上を避けました。同じ経費を両方の制度に計上すると、どちらか一方しか交付決定を受けられません。何をどちらの制度で申請するかを最初に線引きしておくことが、2制度を並行して進める前提になります。

次に、事務職員も対象に含めて人数区分を一段上げました。業務改善助成金の上限額は引き上げる労働者数の区分で変わるため、要件を満たす労働者を漏れなく数えることが、上限額に直結します。

さらに、月給者は時給換算で90円を超えるよう、月給額で調整しました。月給者の引上げが90円コースの基準を満たすかどうかは、時間額に換算して判断されます。端数の出方まで確認しておかないと、わずかな差で基準を下回るおそれがあるためです。

こうして、同じ2名の賃上げで、2つの制度の要件を同時に満たす設計としました。

同じような課題をお持ちの方へ

  • 2つ以上の助成金を使う場合は、経費ごとに「どの制度で申請するか」を一覧にし、同じ経費を二重に計上しないようにしましょう。
  • 賃上げの対象者は制度間で重なっても差し支えない場合がありますが、各制度の対象者の範囲(雇用保険被保険者かどうかなど)は個別に確認しましょう。
  • 月給者の引上げ額は、時間額に換算して基準を満たすかを確認しましょう。月の所定労働時間の数え方も結果に影響します。
  • どちらの制度も、交付決定前の契約・発注は対象外です。発注のタイミングをそろえて管理しましょう。
  • 少人数の事業者では、人数区分の差が上限額に大きく影響します。対象になり得る労働者を事前に洗い出しましょう。

参考資料

※守秘義務に配慮し、ご承諾をいただいたうえで、業種・地域・規模などを匿名化して掲載しています。